■今年もニトロプラスの精鋭が日本一を目指す!「ドミニオン」日本選手権レポート(2012年7月30日)

 7月14-15日の2日間にわたり、板橋にて「ドミニオン」の日本選手権が行なわれた。
 「ドミニオン」を心から愛するニトロプラスの因り抜きメンバーが9人、去年に引き続き予選に参加。
 午前の部・午後の部合わせて200人以上が参加した予選をみごと勝ち抜き、ニトロプラスの広報「さとゆう」さんとシナリオライターの「下倉バイオ」さんが、去年に引き続いて本戦に進出を果たした。

自分なりの一本道を進むプレイスタイルのさとゆうさんと、理知的でテクニカルなデッキを構築する下倉さん。言うなれば「技の一号」「力の二号」であるこの2人が、本戦ではどんな戦いぶりを見せてくれるのか、徹底追跡!

本選を前に緊張気味の二人。(左:さとゆうさん 右:下倉バイオさん)

※記事内ではドミニオンのゲーム内容に基づく記述が多くなっています。ドミニオンのルールについては、こちらをご参照ください。


ドミニオン日本選手権の概要

1日目・予選

  • 4人対戦で、1位のプレイヤーは6ポイント、以下2位は3ポイント、3位は1ポイント、4位は0ポイントを得る。
  • 2回戦目以降は、獲得しているポイントの近い人どうしの組み合わせになる。
  • 1回戦ごとにサプライはあらかじめ決まっており、すべての卓で同じものを使用する。
  • 午前の部/午後の部でそれぞれ4回戦ずつを行なう。
  • 合計ポイントの多いほうから30人ずつが予選通過。ポイントが同じ場合は、獲得勝利点が多いほうが上位になる。

2日目・本戦

  • 予選を通過した60人で5回戦を行なう。ポイントの計算方法は予選同様で、上位8人が決勝ラウンドに進出。
  • 2卓での準決勝を行ない、上位2名ずつが決勝戦に進出。
  • 決勝戦で、1位を2回獲得したプレイヤーが優勝となる。
  • 優勝者は夏にアメリカで開かれる「ドミニオン」の世界選手権に招待され、トラベルマネーとして10万円を獲得する。

60人が本戦のスタートを待つ

出番を待つ拡張セットが山積みに

本戦の参加賞として全員にプロモカード「総督」が配られた

ボードゲーム好きとして知られる
芸人の阿曽山大噴火さんも本戦に参加


●本戦のバトルを前に……

 予選を10位という好成績で通過してきたさとゆうさん。本戦の朝、開口一番「実力通りの成績です!」と笑いつつ、「インタラクション(対戦相手に干渉するアタックカードなどのこと)は全部無視して、攻撃をくらいながらも“俺は俺の道を行く!”とブレなかったのがよかったですね」とのこと。
 一方、「今日は来なくてもよかったかなと思ってるんですけど……」と弱気な発言をしていたのは下倉バイオさん。「でも、予選の最終戦で、(同じニトロプラスの)あっきゅんと同じ卓になって、1位の人だけが予選突破できるってシチュエーションで、あっきゅんのしかばねを踏み越えて勝ち残ってきたんで、彼の分もがんばります」と泣ける話を聞かせてくれた。
 それでは、お二方の戦いの軌跡をご覧いただこう。


●1回戦目(各回戦での使用サプライは こちら

 下倉さんは、「巾着切り」があまり買われない平和な卓で、「見張り」による圧縮から「漁村」+「書庫」コンボで手札を増やし、「手先」の技をもからめたきれいなデッキを構築し、みごと1位を獲得。

ゲーム終了時の下倉さんのデッキ

 さとゆうさんは対称的に「巾着切り」が飛び交う危険な卓で、「商船」と「書庫」1枚ずつくらいしか入っていない超お金偏重デッキを作り、細かく得点を稼いで2位。これが同じサプライによるゲームなのだろうか?と不思議に思うほど、雰囲気の異なる展開を見せた。

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●2回戦目

 拡張セット「錬金術」のカードを取り入れたサプライだが、下倉さんはあえて「錬金術」方面に行かず「男爵」ビートで早めの勝負をしかけ、「錬金術」使いに追い上げをかけられるも、2位で逃げ切った。
 さとゆうさんは「薬師」+「銅細工師」のコンボを決め、なおかつ早めに終わらせる作戦が功を奏して1位となった。

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●3回戦目

 強力なアタックカード「ならず者」が場を掌握し、延長戦続出のゲームとなった。
 下倉さんは「望楼」で手札を増やしてからの「銀行」で手堅く稼ぐが、ゲーム終盤で「ならず者」を多用して勝利点トークンをかき集めるプレイヤーに追いすがられ、3位に。
 さとゆうさんは「鉱山の村」から「保管庫」+「望楼」を使って一足先に「植民地」に到達することに成功し、逃げ切っての2位。

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 なおこのサプライには、「ならず者」で購入を増やして「銅貨」をたくさん買い、それらを手札に残しておいた「望楼」で即座に廃棄する、という裏技が存在する。去年の日本選手権準優勝のretletさんはこれをフル活用し、117点という驚異的な高得点を獲得した。

勝利点トークン(左上)が足りなくなるほどだった

●4回戦目

 下倉さんは「地下貯蔵庫」で手札を調整しつつ「移動動物園」を使い「豊穣の角笛」でまとめるきれいな流れを作り上げ、2位。
 一方さとゆうさんは、去年の日本選手権を制し世界選手権でも優勝したre_neさんと、上記の準優勝者retletさんと対戦することになり、イヤそうな顔でテーブルについた。

re_neさん(左)、retletさん(右)と同卓するさとゆうさん

 retletさんが山札を引き切って「豊穣の角笛」を回す圧倒的なデッキをほぼ作り上げたが、そこへ「祝祭」と「再建」でシンプルに展開していたさとゆうさんの「泥棒」がクリーンヒットし、「豊穣の角笛」を奪うという劇的な展開に!
 しかしそれでもretletさんは底知れぬ力を発揮。「豊穣の角笛」を一気に買い戻して勝負を決めると、さとゆうさんは3位となってしまった。

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●5回戦目

 どちらも、強豪だらけの中でここまで大健闘してきており、ここで1位を取れればベスト8に進出できるかも……という状況。
 本戦最後の5回戦目は、最新拡張セット「異郷」を使った、デッキバランスが難しいサプライ。2人とも「国境の村」で獲得した「厩舎」を連打し、終盤戦で「農地」を獲得しつつ「国境の村」を「属州」に変換していくという流れを取るが、これにさらに「地図職人」+「願いの井戸」コンボを織り交ぜたプレイヤーに比べると終盤の伸び悩みが響いて双方4位となってしまい、日本一への夢は惜しくもここで断たれてしまった。

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●戦い終えての感想

下倉バイオ「去年に比べて、さらにプレイヤー層が厚くなってきた感じがしますね。僕は反省点も多くて、まだまだです。去年22位だったのに、今年は31位になっちゃいました。来年はもっとがんばって、10位台くらいにはなりたいです」
さとゆう「29位でした。いやあ、戦術の研究が進んでて、僕らも毎日遊んでても追いつけないですね。あと、最終戦で強いけど普段はあんまりやらないような戦術を、ちょっとやってみようと思ってやったんだけど、“ちょっとやってみる”って場じゃなかった。最後だけ自分のやり方を貫けなかったのが敗因です」

 しかし、勝ちきれなかった理由はそれだけではないようで、「やっぱり明日のことが気になっちゃって、特に最終戦は気もそぞろだったんですよね」とのこと。
 というのも、この日の翌日は「ニトロプラスカードマスターズ」の銀河一決定戦が秋葉原で開催されることになっており、「たぶん今日出場してる人たちも、明日のための肩慣らしだと思いますよ(笑)」とのこと。
 そう、銀河をめざす「ニトロプラスカードマスターズ」勢にとっては、日本選手権など前哨戦にすぎないのだ。その銀河一決定戦の様子は、次回の記事にて掲載!


ほかのボードゲームも面白そう!


 今回「ドミニオン」日本選手権は、「ホビージャパンゲームフェスティバル」の中で行なわれ、ほかのゲームの日本選手権も併催されていた。たまには毛色の違うこういったボードゲームもいかが?


○ディクシット

 カードの美しいイラストが特徴で、親が出したカードがどれかを当てるゲーム。100分にもわたるハードな決勝戦を制した優勝者川上さんは、「勝因はすべてのカードを覚えていたことです!」

頭脳よりも感性のゲームなので、小さな子の参加も

優勝して賞品の「飛び出す絵本」を獲得した川上さん(中央)


○7Wonder

 ぐるぐる回るカードを1枚ずつ選んで使いながら、世界の七不思議を建築するゲーム。優勝したソエダさんは関西からこのために4人の仲間と上京したそうで、「チームプレイが冴えました」と勝因を語った。

整然とカードが並ぶ盤面が美しい

優勝賞品は「7Wonder」にちなみ、「7&i」の商品券

○ビブリオス

 得点サイコロを集めるため、5種類のカードを競り合うゲーム。予選3回戦と決勝戦ですべて1位を獲得し圧勝したエーツーさんは「写本を集める」というテーマに合わせた賞品の電子書籍リーダーをゲット。

要素が少なくシンプルなのに面白いと評判の「ビブリオス」

エーツーさんに勝因を聞くと「日ごろの行いです」

○髑髏と薔薇

 こちらは選手権ではないものの、「髑髏と薔薇」を12人という大人数で実施。笑いが絶えないテーブルとなっていた。

「髑髏と薔薇」はルールが単純で人柄が現れる人気のブラフゲーム


●決勝進出の猛者は

 さて、「ドミニオン」最高峰の戦いに戻ろう。
 ベスト8による準決勝を経て、決勝卓に集った最強の4人。なんと4人全員が、去年の優勝者を輩出した「ドミニオン木曜会」で鍛錬を続けているメンバーとなった。この通称「木ドミ」とはボードゲームショップで毎週「ドミニオン」を遊んでいる強豪グループで、改めてその勝負強さを天下に知らしめた。

決勝のテーブルを観客が取り囲む

 誰かが2勝すれば優勝が決まるというルールで、まず田中さんと三津家さんがそれぞれ1勝して王手をかける。
 3戦目、三津家さんはデッキを圧縮するカードがないにもかかわらず、手札に「銅貨」がかぶることなく、常に強いモードで「移動動物園」を使い続け、観衆から驚きとともに歓声があがる。「使いこんでますからね、愛ですよ、愛」とのことで、常に3枚引ける「移動動物園」のアドバンテージに加え、「街道」でコストを減らして「鉄工所」で5コストまでのカードを獲得するという技をも組み合わせ、三津家和彦さんが優勝した。


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最近のセットを知らないとのことで、始まる前にカードを読んでいたにもかかわらず、
本戦で5回戦中1位が4回と、素晴らしい成績を挙げた準優勝の田中さん(手前)

終了時の三津家さんのデッキ

ベスト4のメンバー。左から4位retletさん、1位三津家さん、2位田中さん、3位夕凪さん。
撮影中も決勝戦の反省と考察を続けていた、真のドミニオンジャンキーたちである。

優勝者コメント


三津家和彦
2002年にTCG「マジック:ザ・ギャザリング」の日本選手権で優勝し、当時「八王子の智将」と称された。現在は「ドミニオン」オンライン対戦ツールの猛者として知られる。


――おめでとうございます。昨日の予選はいかがでしたか?
三津家:1-3-1-3位で、正直去年よりラインが緩かったのでなんとか抜けられたというところです。

――今日の本戦はどうでしたか?
三津家:2-2-3位とふるわなくて、いきなりあとがなくなりましたね。ただその次のサプライには自信がある「収穫祭」が入ってきたので、決勝同様に「移動動物園」をガメてなんとかなりました。

――「ドミニオン木曜会」には長いこと参加されているんですか?
三津家:そうですね、去年からずっと。最近は行ってももっぱら「アグリコラ」(農場経営ボードゲーム、こちらも日本語版はホビージャパンから発売中)をやってるんですが。

――「アグリコラ」もお好きなんですか?
三津家:面白いですね。一昨日もやってて、そのとき「アグリコラ」やってたメンバーは、全員予選抜けました。

――じゃあ「ドミニオン」で強くなるためには、「アグリコラ」をやれと。
三津家:そんなことはないですね(笑)

――そう書いておくとホビージャパン的にいいかもしれないですよ。
三津家:じゃあそれでお願いします(笑)

――「ドミニオン」が強くなるには、ほかにどうすればいいでしょうか?
三津家:毎試合、最初に展開を予想して、終わったあと実際にはどういう展開だったか反省するのが、長期的に伸びますね。マジック(:ザ・ギャザリング)と一緒で、試合のあとでなぜ勝ったのか、なぜ負けたのか、どういう手が正解だったのかを分析できる人は強くなります。

――なるほど。世界選手権には参加されますか?
三津家:行きたいですが、ちょっと上司と相談してみないことにはまだわからないですね……。出られればもちろん優勝目指してがんばりますし、出られなかったら2位の田中さんにすべてを託します。

――ありがとうございました。

次回、「銀河一決定戦」レポートもお楽しみに!